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【完全公開】バンコク駐在員の1日—製造業・工場勤務のリアルなスケジュール

「駐在生活って、実際どんな感じなの?」

帰国するたびに、友人や後輩からこう聞かれる。華やかなイメージを持たれることも多いが、実態はもう少し地味で、もう少し泥臭い。

今日は、バンコクで大手製造業の駐在員として働く友人の、ごくごく普通の平日を時系列でお見せしよう。特別な日ではない。本当に「いつもの1日」だ。


6:00 起床ースクンビット地区のコンドミニアム

アラームより少し早く目が覚める。バンコクの朝は早い。窓の外はすでに明るく、遠くからバイクの音が聞こえてくる。

シャワーを浴びて、簡単な朝食をとる。コンドミニアムの部屋にはキッチンがあるが、朝はコーヒーとトーストで済ませることが多い。日本から持ってきたインスタント味噌汁が、地味にありがたい存在だ。

スマホで日本のニュースをざっと確認する。時差は2時間。日本はすでに業務が始まっている。

【豆知識】 プロンポーン駅やトンロー駅付近はスクンビットエリアの中でも日本人駐在員に人気のエリア。日本食スーパーが近く、日本語が通じる店も多い。家賃は1LDKで4〜8万バーツ(約20〜32万円)が相場だ。


7:00 お抱え運転手が迎えに来る

7時ちょうど、コンドミニアムのロビーに降りると、すでにドライバーのソムチャイさんが待っている。彼は毎朝1分も遅れない。

「サワディークラップ、田中さん」。いつもの挨拶。助手席ではなく後部座席に乗り込む。これが最初は少し気恥ずかしかった。日本ではタクシー以外で後部座席に乗る習慣がないからだ。

お抱え運転手は、製造業の駐在員には珍しくない福利厚生だ。工場が郊外にあるため、会社が手配してくれる。月々のコストは会社持ちで、ドライバーの給料は2〜3万バーツ(約8〜12万円)程度が相場だ。


7:00〜08:30 車内の1時間半—これが意外と重要な時間

プロンポーンからサムットプラカーンの工場まで、距離にして約30キロ。だが高速道路を使っても1時間半はかかる。バンコクの渋滞は世界屈指だ。

この1時間半を、どう使うかが駐在員としての差を生む。

最初の30分は日本本社からのメールチェックと返信に充てる。時差の関係で、日本の就業時間終わりに送られてきたメールが、こちらの朝に溜まっている。残りの1時間は本を読むか、タイ語の勉強をするか、ぼんやりと車窓を眺めるかだ。

高速道路から見えるバンコクの街並みは、何年経っても飽きない。巨大な仏像、色鮮やかな寺院、林立するコンドミニアム—日本では絶対に見られない景色だ。

ソムチャイさんとの会話も、この時間の楽しみの一つだ。タイ語と英語を混ぜながら、タイのニュースや家族の話をする。ドライバーとの関係は、現地の生活感覚を掴む上で意外なほど重要だ。

【渋滞豆知識】 バンコクの渋滞ピークは朝7〜9時、夕方5〜8時。雨季(5〜10月)は道路が冠水することもあり、さらに悪化する。Googleマップなどで渋滞状況をチェックするが、あまりあてにはならない。


8:30 工場到着—別世界が始まる

工場のゲートをくぐると、空気が変わる。広大な敷地、整然と並ぶ工場棟、忙しく行き交うローカルスタッフ。バンコク市内とはまったく別の世界だ。

まず工場内を一周する。これは赴任当初からの習慣だ。朝イチで現場を歩くことで、前日から変わった点、気になる点が自然と目に入る。ローカルスタッフへの挨拶も兼ねている。「アルン・サワット(おはよう)」と声をかけると、照れ笑いしながら返してくれる。このひと言が、1日の始まりをつくる。

8時半からは朝礼。日本語とタイ語が飛び交う。通訳のスタッフが間に入るが、長年いると「なんとなく」タイ語のニュアンスがわかるようになってくる。

【製造業駐在あるある】 工場系の駐在員は、市内勤務の駐在員とはライフスタイルがかなり違う。通勤時間が長い分、プライベートの時間は限られる。ただ、工場の中では圧倒的に「現地に深く関わる」経験ができる。


9:00〜12:00 午前の仕事—会議、確認、判断の連続

午前中は会議が集中する。生産状況の確認、品質問題の共有、本社への報告準備。ローカルマネージャーと英語で議論し、内容を日本語で本社に報告する。この「翻訳作業」は語学力だけでなく、文化的な文脈の変換も含む。

たとえば、ローカルスタッフが「問題ありません」と言っても、それをそのまま本社に「問題なし」と報告するのは危険だ。「問題ない」の基準が、日本と現地では違うことが多い。長年の経験でそのギャップを読み取れるようになるが、最初の1〜2年はここで痛い目を見る駐在員が多い。

合間に個別のスタッフとの1on1も入る。昇給の相談、チーム内のトラブル、有給の申請—マネジメントの仕事は尽きない。


12:00 ランチ—社食という名の異文化交流

正午になると、工場の社食に向かう。ローカルスタッフと同じ食堂で、同じ飯を食う。これを意識的に続けている。

社食のメニューはタイ料理中心だ。ガパオライス、カオマンガイ、クイッティアオ(麺)—1食あたり40〜60バーツ(約160〜240円)と驚くほど安い。辛さは「ペットノイノイ(少し辛めに)」と伝えるのが、個人的なベストだ。

ローカルスタッフと一緒に食べることには、実は大きな意味がある。食事の場では、仕事中には見えない本音が出やすい。「最近、○○さんと△△さんの関係がギクシャクしている」「来月、誰々が辞めそうだ」——そういう情報が、何気ない会話の中から入ってくる。

孤独にデスクで食べている駐在員ほど、現場の空気を読めなくなる。これは断言できる。

【社食豆知識】 タイの工場社食は、日本の社食より格段に安くて美味しいことが多い。ただし辛さには注意。「マイペット(辛くしないで)」という言葉は必須だ。


13:00〜17:30 午後の仕事—本社対応と現場判断

午後は日本本社との連絡が増える。時差2時間のため、日本の午後1時はタイの午後3時。この時間帯に本社からのコールが集中する。

「現地の状況を説明する」という作業は、想像以上に消耗する。本社は現場を見ていない。現場は本社の意図を完全には理解していない。その「翻訳役」が駐在員の本質的な仕事だ。

午後4時を過ぎると、ラインの稼働状況を最終確認する。翌日の生産計画の調整、品質検査の結果確認、部品の入荷状況チェック—細かい確認作業が続く。

17時になると、ローカルスタッフはほぼ全員定時で帰る。これは最初驚いた。日本なら「上司が残っているのに帰れない」という空気があるが、ここにはない。むしろ残業を当然とする文化の方が異常だということを、タイに来て初めて体感した。


17:30 退勤—帰りも1時間半

17時半にソムチャイさんが迎えに来る。朝と同じルートを逆向きに走るが、夕方の渋滞は朝より激しい。場合によっては2時間かかることもある。

帰りの車内では、日本へのメール返信はほとんどしない。これは意識的に決めたことだ。オンとオフの切り替えをしないと、東南アジア駐在は精神的に消耗する。

音楽を聴くか、ぼんやりするか。ソムチャイさんと今日あった話をするか。この「なんでもない時間」が、実は明日への英気を養う。


19:00〜 夜の過ごし方—週3日は駐在員仲間と

週に3日ほどは、同じエリアに住む駐在員仲間と夕食や飲みに行く。

行き先はだいたいプロンポーン〜アソーク周辺。日本食居酒屋、タイ料理のローカル店、たまには少し奮発してルーフトップバー。

話題は仕事のことが多い。「うちの工場で最近こんなことがあって」「本社からまた無茶な要求が来て」—愚痴のようでいて、実はここで重要な情報交換が行われている。他社の駐在員から聞く話は、自分の職場を客観視するヒントになる。

飲み代は、日本食居酒屋で一人1,000〜2,000バーツ(約4,000〜8,000円)。ローカルの店なら500バーツ以下で十分楽しめる。バンコクは外食が安いのが本当にありがたい。

22時には帰宅する。翌朝6時起きのため、夜更かしはしない。これも赴任当初に身につけたルーティンだ。


19:00〜 夜の過ごし方—週2日は自炊または近所で

飲みに行かない日は、コンドミニアム近くのローカル食堂か、自炊で済ませる。

近所のローカル食堂は、ガパオライスが50バーツ(約200円)で食べられる。バンコクに慣れてくると、こういう店の方が落ち着くようになる。タイ語で注文できるようになると、店のおばちゃんに顔を覚えてもらえる。それがなんとなく嬉しい。

自炊の日は、フジスーパーで買った食材で簡単なものを作る。単身赴任で自炊をするかどうかは人によるが、食事にストレスを溜めないことは、長期駐在において意外と重要だ。

食後は読書かNetflixか。タイのNetflixは日本とラインナップが少し違い、タイドラマやタイ映画が充実している。これを見ているうちに、タイ語のリスニング力が自然と上がった。


23:00 就寝

翌朝6時に起きるため、23時には床につく。

布団に入りながら、今日1日を振り返る。うまくいったこと、うまくいかなかったこと。ローカルスタッフに言えた言葉、言えなかった言葉。

駐在生活は、華やかでも特別でもない。毎日のルーティンの積み重ねだ。だがその積み重ねの中に、日本では絶対に得られない経験が詰まっている。

それに気づけるかどうかが、駐在を「消化試合」にするか「人生の転機」にするかを分ける。


まとめ——製造業・バンコク駐在員の1日、データまとめ

  • 起床:6:00
  • 通勤手段:お抱え運転手(会社手配)
  • 通勤時間:片道約1時間半
  • 勤務開始:8:30
  • ランチ:社食(40〜60バーツ)
  • 退勤:17:30
  • 夕食:駐在員と外食(週3)/自炊・近所(週2)
  • 就寝:23:00
  • 住居エリア:プロンポーン・トンロー(スクンビット周辺)
  • 家賃:4〜8万バーツ(会社負担または補助あり)
  • 外食費目安:日本食居酒屋1,000〜2,000バーツ/ローカル食堂50〜200バーツ

次回は「週末編」をお届けする予定だ。バンコク駐在員が週末をどう過ごすか—ゴルフ、旅行、ローカル探索、そして時々の孤独まで、リアルに書いていきたい。


このシリーズは「東南アジア駐在員のリアルな1日」として定期連載中です。製造業・金融・商社など、職種別のリアルな駐在生活を発信しています。

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kiwami
海外在住経験を活かし、海外移住をもっと広めたい。 旅行、スポーツ、写真などのネタを投稿
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