インドネシアの贈収賄に関する法律
まず抑えておきたいのは、下記の法律で決められている大前提である「公務員等に提供されるすべてのgratificationsはBriberyとみなされる」ということである。
Article 12B of Regulation No 31 Year 1999 on the eradication of Corruptionとその改正規制Regulation No. 20 year 2021
「Gratifications」は、直訳すれば”満足させる物”となるが、決してあやしいものに限ったわけではない。贈り物と訳されることが多く、次の物を含むとされている:
- 金銭的なギフト(ギフトカード、クーポン券)
- ティーカップなどの小物、洋服
- 割引
- 手数料
- 金利なしのローン、
- 旅行チケット、
- 宿泊
- 旅行(ツアー)
- 医療サービス
御覧のように非常に広範囲にわたっており、何かしら相手に対して便宜を図ろうとしている場合は、該当すると考えたほうが良い。
KPKへのレポートと関連機関のルール
大変厳しい規制ではあるが、なんでもかんでもBriberyとなるわけではない。
Gratificaionsを受け取る公務員等がKPKという監督機関にしっかりとレポートをしていれば問題ないのである。
そして、そのレポート対象からは、食事や食べ物の提供が外れている点がポイントである。食事などの接待においては、一般的に社交儀礼的であれば良いとされている。
では、どれくらいの金額が社交儀礼的と言えるのか。ジャカルタでいえば、だいたい一人150,000インドネシアルピア(5/17/2021のレートで約1150円)前後である。地方によっては社交儀礼として考えられる金額は変わってくるので、各地域において感覚を持っておきたいものである。
なお、関連する業界関係の機関は、より厳格なルールを敷いていることがあるので、併せて確認する必要がある。
KPKへのレポートをしていればまず問題ないが、、、
上記2のとおり公務員等がKPKにレポートして何も言われなければまず問題ないが、公務員等にGratificationsすることにより、その公務員等の所属する機関に何かを行うよう、または行わないように仕向けることを意図している場合には、問題ありである。
これは、常識的に考えればわかるはずであるが、上記のように形式的に判断だけしてしまうと落とし穴にはまってしまうので、注意が必要である。
そもそも「公務員等」って誰やねん
「公務員等」の定義も実に解釈が揺れている。まず、国の省庁で働いている人は間違いなく該当する。では、国の資本が入っている会社の役員・従業員はどうか。これは、形式的には、国からの資本が直接入っている会社の従業員は該当する。
しかしながら、例えば、国の資本が直接入っているState-owned companyの子会社といったように、間接的に国の資本が入っている場合はグレーである。
この点、法令やガイドラインでははっきりとした解釈が示されていない。安全に対策するのであれば、上記のような子会社の従業員は公務員等に該当するとして対応した方がよい。
具体例を通して見てみよう
食事
一般的に社交儀礼として考えられる範囲であれば問題ない。例えば、ラマダン中のディナーもこのように考えてよい。
いわゆる贈り物(お菓子、ティーカップ、洋服)
例えば、ラマダンの断食明け大祭(レバラン)に際して、贈り物をすることがある。英語ではparcel(小包)という言い方がされる。
これらを公務員等に送る際は、社交儀礼の範囲内であるかということに加えて、本当に必要であるかも検討しなければならない。
なぜこういう言い方をするのかというと、贈り物は、食事と違って公務員等がKPKに対してレポートする必要があり、また形に残り、Briberyとしての客観的な要件を満たすことが容易であると考えるからである。
公務員等がきっちりレポートしてくれて問題なければよいのだが、はっきりいってきっちりやっているとは思えず(やっていたらCPIスコアも良いはずだろう)、彼らを信用して動くのは極めて危険だ。
彼らに一筆書いてもらい、問題ないことを確認する方法も考えられるが、たとえそのような対策をとったとしても
法律の客観的な要件を満たしさえすれば関係ないことなので、あまり意味はない。
まとめ チェックポイント
以上、公務員等にインドネシアにおいて贈り物や食事をするときのチェックポイントはこちら:
- 贈り物をする相手は公務員等に該当するのか
- 食事会なのか、それとも贈り物なのか(贈り物であればやめることを考える。)
- 一般的に社交儀礼と考えられる範囲内の金額、内容であるか
- 食事、贈り物をすることで彼らに何かをやってもらうことを期待していないか。あるいは、入札などが近い日にないか。主観的に何も期待していなくても、客観的にあやしまれないようにする。
- 関連する業界機関などで独自のルールはないか