法律

インドネシア オムニバス法~独占禁止法の改正と外国投資規制の変更

2020年11月2日にインドネシアにおいて、通称オムニバス法が制定された。今回は、独占禁止法の改正と外国投資要件の変更について概括していく。

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独占禁止法の改正

インドネシアでは、日本と同様に、カルテル、不当廉売などが禁止されている。執行機関はKPPU(事業競争監視委員会)と呼ばれており、事業者に対して命令、是正措置、制裁金を科すなどの権限がある。

なお、独占禁止法の改正内容は、オムニバス法およびその施行規則である「政令2021年第44号」におけるものを紹介する。

KPPUの決定に対する不服申立て

ざっくり改正は、次のとおり

改正前改正後
KPPUから決定通知受領後14日以内に地方裁判所に不服申立て
審理期間は30日
KPPUから決定通知受領後14日以内に商事裁判所に不服申立て
審理期間は3か月以上12か月以内

商事裁判所は、知的財産や倒産関係などの専門的案件を扱う裁判所。

制裁

改正内容は、次のとおり

改正前改正後
制裁金10億ルピア以上250億ルピア以下
(770万円以上1億9250万円以下)
10億ルピア以上
(770万円以上)
ただし、違反者が関連市場において違反機関に得た純利益の50%または売上の10%のうち高い方の金額は超えない
刑事罰罰金 10億~1,000億ルピア(770万円~7億7,000万円)または禁錮 最長6か月
追加刑事罰 事業許可の取り消し、2~5年以下の役員就任禁止、第三者に損失を生じさせる行為の停止命令
事業者および関係者がKPPUの調査に協力しない場合、50億ルピア(3,850万円)以下の罰金または1年以下の禁固
追加刑事罰は削除

外国投資要件の変更

インドネシア投資調整省(BKPM)により、規則が6月2日に施行された。BKPM新規則は、オムニバス法の施行規則「リスクベース事業許可実施に関する政令2021年第5号」の細則として制定。改正の概要をお伝えする。

最低投資金額

最低投資金額の計算は少しわかりにくくなっている。産業分類ごとに、5ケタの数字で構成されているのだが、これをもとに事業分野ごと、事業地ごとに原則があり、例外もある。以下、解説する。
なお、本ルールは、既存の外国資本企業が新たに別の産業分類に該当する事業を行う場合にも適用される。

原則ルール

インドネシア標準産業分類(KBLI)に基づく事業分野ごとかつ事業地ごとに、最低投資金額100億ルピア(7700万円)超

例外ルール

下表のとおり

変更前変更後
大規模商業(卸業を含む)KBLIの最初2ケタごとに、100億ルピア(7,700万円)超
土地建物は除く
KBLIの最初4ケタごとに、100億ルピア(7,700万円)超
土地建物は除く
飲食業一つの県・市ごとに、100億ルピア(7700万円)超
土地建物は除く

KBLIの最初2ケタごと、かつ、1か所ごとに、100億ルピア(7,700万円)超
土地建物は除く
建設業一つの建設活動ふぉろに、100億ルピア(7700万円)超
土地建物は除く
KBLIの最初4ケタごとに、一つの建設活動において100億ルピア(7,700万円)超
土地建物は除く
製造業原則どおり異なるKBLIの製品であっても一つの生産ラインで製造する場合、100億ルピア(7,700万円)超で足りる
土地建物は除く
不動産事業原則どおり建物全体または集合住宅への投資を行う開発事業は100億ルピア(7,700万円)超
土地建物を含む

例1.衣服の卸売り業と化粧品の卸売業をビジネスとする場合

KBLI番号は、衣服が「46412」、化粧品が「46443」。上記にあてはめると、変更後ルールは、4ケタごとに、100億ルピア。今回は衣服と化粧品の2種類あるので、100億ルピア+100億ルピアの合計200億ルピア超の投資金額が必要になる。
他方で変更前はどうだったか。ルールは2ケタごとに、100億ルピアである。衣服・化粧品ともに同じ46であるため、1種類しかないため、100億ルピア超の投資金額が必要であった。今回のケースは、ルール変更後、100億ルピアの金額増ということになる。

例2.製造業で車両の車体とスペアパーツの製造をビジネスとする場合

KBLI番号は、車体が「29200」、スペアパーツが「29300」。
変更前は、原則通りのルールだったので、事業分野が異なる車体とスペアパーツは、それぞれ100億ルピアを計算され、合計200億ルピアが投資金額として必要となる。
変更後は、同じ生産ラインで製造されれば、100億ルピアで足りることとなった。もっとも、「同じ生産ライン」の具体的な定義はよくわかっていない。

最低払込資本

最低払込資本は、次のとおり引き上げられた。

変更前変更後
最低25億ルピア(1925万円)最低100億ルピア(7700万円)

従前は、自己資本となる投資と融資、貸し付けを合わせた金額とすることができた。しかし、変更後は、自己資本のみで最低100億ルピアを満たさないといけないこととなった。

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