法律

米国EAR改正とその解釈について

【ざっくり経緯】
5/15 直接製品規制
8/18 EAR改正、直接製品規制がさらに改正され、Entitiy Listに掲載されているHuaweiおよび関連会社向けの再輸出、国内移転に対する規制が大幅に再拡大・強化。

米国商務省産業安全保障局(BIS)は8月18日、中国のファーウェイと関連企業に対し、米国製の技術・ソフトウエアへのアクセス制限を強化した。

ファーウェイと関連企業は2019年5月以降、BISが管理するEntity Listに掲載され、これら企業への米国製品(物品、ソフトウエア、技術)の輸出・再輸出などは原則不許可である。

BISは2020年5月、ファーウェイ・関連企業が設計し、米国の技術・ソフトウエアを用いて国外で製造された直接製品について、ファーウェイなどへの再輸出・米国外から輸出・国内移転をする際に、事前にBISの許可が必要となる措置を発表した。

2020年8月18日の規則変更により、米輸出管理規則(EAR)の一般禁止事項3〔連邦規則集第15編のPart736.2(b)(3)〕で規制される、米国の技術・ソフトウエアに基づき米国外で製造された直接製品について、以下の取引を行う場合に、事前にBISの許可が必要となる。

  1. ファーウェイ・関連企業が生産または購入、注文する部品・装置の開発または製造に使用される場合。
  2. ファーウェイなどが「購入者」「中間荷受人」「最終荷受人」「最終使用者(エンドユーザー)」などの当事者である場合。

Entity List脚注1の直接製品の定義

  • EAR対象の以下のいずれかのECCNの技術・ソフトから米国外で直接、製造された品目。
    ※ファーウェイ、関連会社が関与せずに製造された品目も含まれる。
  • 米国原産かつEAR対象の以下のいずれかのECCNの技術またはソフトから米国または米国外で直接製造されたプラントまたはプラント主要部分から米国外で直接製造された製品
    ※ファーウェイ、関連会社によって製造・開発された技術・ソフトをまったく利用していない場合や、汎用製品も含まれる

ECCNの種類:BIS管理の規制品目リスト(CCL)に掲載される国家安全保障(NS)規制に加え、
2020年5月に指定された輸出管理分類番号(ECCN)(3E001、3E002、3E003、4E001、5E001、3D001、4D001、5D001、3E991、4E992、4E993、5E991、3D991、4D993、4D994、5D991)に該当する技術またはソフトウエアが該当する。

Entity List脚注1の認識可能性要件のひとつ

再輸出または国内移転しようとしているEntity List脚注1(a)または(b)が定義する直接製品がファーウェイ・関連会社のいずれかによって製造、購入または注文された部品、部分品もしくは製品に組み込まれるか、またはその製造もしくは開発に利用されることを知りまたは知り得る場合。

ケーススタディ

◆Entity List脚注1(a)(一定のECCN技術・ソフトウェアを利用の直接製品)およびEntity List脚注1(b)(一定のECCN技術・ソフトウェアを利用の直接製品である製造装置)について:

1.米国外での製造・開発において、利用した技術のほとんどが非米国原産技術であって、利用した技術のわずかが米国原産の一定ECCN技術である場合、「直接製品」にあたるか

  • 利用された米国原産の一定ECCN技術は、製造・開発された製品の全部ではなく、その一部だけに利用されている場合

    常に直接製品にあたらない。直接製品の直接性、第一次性の要件を満たさないため。デミニミスルールは関係しない。
  • 米国原産一定ECCN技術および米国非原産技術の双方が、製造・開発された製品の全部分に利用されている場合

    →デミニミスルールにより米国原産の一定ECCN技術の価格比率が25%超のときは、利用された技術全体がEAR対象になり、かつ、その技術全体が一定ECCNにあたるときのみ、それを利用した製品は直接製品になる。

2.米国原産の一定ECCN技術から米国外で製品を直接製造する場合でも、通常、工作機械・製造装置の利用が必要であるが、その製造の際に利用する工作機械・製造装置が日本製のものであっても、製品がEntity List脚注1(a)の直接製品かどうか、Entity List脚注1(b)の「一定のECCN技術・ソフトウェアを利用の直接製品である製造装置」かどうかの判断には影響しない

3.米国原産の一定ECCNのEDAソフトから開発した半導体設計技術は直接製品にあたるが、その半導体設計術から製造された半導体が直接製品にあたるかどうかは、上記1と同様の分析で決まる

ケーススタディ2

1.A社は、直接製品にあたる自社製品ZIONを日本企業B社に販売。B社は、日本で自己の製品BOXにZIONを組み込んで、ファーウェイ・関連会社に販売。

この場合、A社が、ZIONはBOXに組み込まれることを知りまたは知り得るときは、認識可能性要件を満たし、その組み込み比率の如何を問わず、A社のB社への販売はBISの許可が必要。

ケーススタディ3

日本企業B社がA社から購入した製品ZIONをB社製品のBOXに組み込んでファーウェイ・関連会社に販売。かつ、そのBOXは、デミニミスルール上も、直接製品ルール上もEAR対象外である場合、B社がEAR違反となるときは?

→B社は、EAR違反にならない

ケーススタディ4

日本企業B社がA社から購入したZIONを日本でB社製品のBOXに組み込んで、ファーウェイ・関連会社に販売。かつ。そのBOX自体は、デミニミスルール上も、直接製品ルール上もEAR対象外である場合、
B社がEARの一般禁止事項10(他者のEAR違反を知りまたは知り得るにもかかわらずその違反行為に関与することの禁止規定(§736.2(b)(10))への抵触によりEAR違反になることを確実に防止するにはどうすればよいか。

→B社は、A社からZIONがEAR対象品目でないことの誓約書を取得。さらに、その誓約内容が正しいことを合理的に可能な範囲で確認する。

なお、ZIONがEAR対象品目であっても、直接製品でなければ、Entity List脚注1の規制は生じない。

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